COLUMN
リノベーションとリフォームの違いは?メリット・デメリットと費用相場を解説
「リノベーションとリフォームの違いってなんだろう」このような疑問をお持ちの方は多くいます。どちらも住宅の修繕・改修などの際に用いる言葉で、非常に混合しやすくなっています。
建設業界の方は明確に2つの言葉を分けて使用することもありますが、発注者である住人(一般の方)はどちらを用いても大きな問題はありません。住まいの工事において大切なのは、言葉そのものではなく「何を、どのように変えたいのか」というプランです。
今回はリノベーションとリフォームの言葉の使い分けや、それぞれの費用相場を解説します。それぞれの違いを知ることで、自分が行いたい工事が具体的にイメージできるようになるでしょう。
リノベーションやリフォームに関するよくある質問もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
ー著者ー
c-cube 代表取締役
住宅アドバイザー
安本 昌巨
1970年に大阪市八尾市で生まれ、同市で育つ。
関西学院大学卒業後、地元の信用金庫に勤めた後、父が創業した安本建設に入社。大手ハウスメーカーの下請け工務店として新築やリフォーム工事を請け負った後、1997年に社名を現在の株式会社シーキューブに変更。下請け工事の請負をやめ、「語り継ぐ映画のような家づくり」を理念に、多くの家づくりを手掛ける。
目次
リノベーションとリフォームの違い
リノベーションとリフォームの違いは以下のとおりです。
・リノベーション:現在の住宅に新しい価値を生み出すこと
・リフォーム:古くなったものを作りなおすこと
上記のように区別して使われることが多いものの、明確な違いが存在するわけではありません。仮に、同じ工事内容であっても設計士やリフォーム会社によって、呼び方が異なる場合もあります。
前述のとおり、一般消費者が言葉の意味を詳しく理解する必要性は低いため、呼称についてはさほど気にしなくてもよいでしょう。
リノベーションとは?
リノベーションは、主に「古い建物に新たな価値を与えるための工事」を指します。一例として「壁を取り除いて間取りを変える」「コンセントを増設する」などの工事があげられます。
古い住宅をリノベーションすることで、新築のような見た目に作り変えることも可能です。全体として、リフォームよりも比較的大きな規模の工事が該当することが多いでしょう。
戸建て・マンションともにリノベーション工事が可能ですが、それぞれできること・できないことがあります。マンションの場合、電気や配管関係が建物全体とつながっているため、許可を得られる工事しかできません。
一方戸建ての場合は「建ぺい率」や「容積率」などの決まりのもとで建築されているため、これらの法令に抵触しないよう、工事を企画する必要があります。
以下ではリノベーションのメリット・デメリットを解説します。
リノベーションのメリット
リノベーションのメリットは主に以下2点です。
・自分の好みにデザイン、設計できる
・物件の選択肢が豊富
現在の住まいをリノベーションする方ももちろんいますが「改修を前提に中古物件を取得し、作り変えて住む」というケースも多くあります。
自分の好みにデザイン、設計できる
リノベーションのメリットの1つに、デザインの自由度があげられます。リフォームに比べて工事できる内容が幅広いため、室内をガラっと違うものに変えることが可能です。
建売住宅の間取りが希望と異なる場合、あえて中古物件を選びフルリノベーションするというのも、ひとつの手段と言えます。
新築の注文住宅に比べて安価で好みの住宅にすることも可能なため、間取りにこだわりがある方には向いているでしょう。
また、生活環境の変化に合わせて間取りを変更することもできるので、ライフスタイルに合わせたリノベーションを取り入れることもおすすめです。
物件の選択肢が豊富
中古物件のリノベーションをする場合、選べる物件が非常に多くなります。とくにマンションの場合、新築物件がそう多く作られないエリアも多数存在します。
「〇〇駅から5分以内が良いけれど、このエリアに物件がない……」
このような悩みをお持ちの方もいるでしょう。新築にこだわらなければ、自分が住みたい場所にすでに建っているマンションを住まいの候補にできます。
外観がやや古かったとしても、上手にリノベーションを行えば室内は新築同様になります。
住宅選びにおいて、建設地に重点を置く場合はリノベーションの選択肢も検討してみましょう。
リノベーションのデメリット
リノベーションのデメリットとして、以下があげられます。
・費用が高額になるケースが多い
・建物の構造によってできる工事と、できない工事がある
・工事の規模が大きく完了までに時間がかかることがある
メリットだけではなく、これらの注意点も把握したうえで工事を検討しましょう。
費用が高額になるケースが多い
新築物件の購入に比べて、中古物件をリノベーションするほうが価格を抑えられるケースが多くあります。
しかし、こだわったリノベーションを行う場合、かえって割高になることもあるかもしれません。
とくに、間取りの変更や電気・ガス・水道関係の工事は大がかりなものになるため、あらかじめ費用相場を確認しておきましょう。
建物の構造によってできる工事と、できない工事がある
リノベーションではさまざまな工事を行えますが、建物の条件によってはできない作業もあります。
中古マンションの場合、玄関や窓は「共用部分」にあたるため、リノベーションは原則としてできません。
また管理組合の規則で、床のフローリングへ張り替えができないケースもあります。
※フローリングだと足音が階下に響くため、禁止されていることがあります。
中古戸建ての場合は、リノベーション以前に耐震強度の確認が必要です。
躯体の老朽化が進んでいる場合、そもそもリノベーションが難しいことがあります。
中古物件を取得する際は、これらの点を事前によく確認しておきましょう。
工事の規模が大きく完了までに時間がかかることがある
リノベーションでは、さまざまな工事を行うことが可能ですが、大規模になるほど工期も長くなります。工事の種類によりますが、約3~6か月かかることもあります。
中古住宅を購入したのちリノベーションを行う場合、すべての手続きが終わるまでに長い時間がかかってしまうことも多いでしょう。好みの間取りを作れたり、費用を抑えられたりするメリットはあるものの「すぐに生活を始めたい」という方には向いていないかもしれません。また、建物周辺に対して工事の影響(騒音や人の出入りなど)が、長く出てしまうことも懸念点と言えます。
やりたい工事がどのくらいの時間を要するのか事前に確認し、実施スケジュールに問題がないかよく検討しましょう。
リフォームとは?
リフォームとは、住まいのなかで古くなってしまった部分を新しくする工事のことです。実はリフォーム(reform)は和製英語だと言われており、そのままの意味では海外では伝わりません。※日本のリフォームと同等の意味を表す英単語は「remodel」です。
リフォームは、行う内容によって以下のように分類されます。
部分リフォーム | 住宅のなかの一部分だけをリフォームすること |
フルリフォーム | 住まいを全体的に直して新しくすること |
表層リフォーム | 壁紙や床の張り替えを行うこと(表面的な修繕のみで、お風呂やキッチンなど大規模な工事は行わない) |
スケルトンリフォーム | 間取りを変更する大規模なリフォーム(柱や枠などの主要部分以外をすべて取り除いて行う) |
大規模なリフォームの場合、建て替えとの比較検討をされる方も多いでしょう。予算や工事内容など、優先すべきものによって判断する必要があるため、一概にどちらが良いとは言えません。
リノベーション・リフォーム・建て替え、それぞれにメリット・デメリットがあるため、まずは専門家に相談してみることがおすすめです。
リフォームのメリット
リフォームのメリットとして、主に以下の3点があげられます。
・リノベーションに比べて短期間で工事が終わる
・完成がイメージしやすい
・価格を抑えやすい
リノベーションとの違いにも着目し、どちらが自分の住宅に合うのか検討してみましょう。
リノベーションに比べて短期間で工事が終わる
リノベーションは、長い場合で半年程度の期間を要するケースがあります。一方、リフォームの場合は最短で半日程度で終えられる工事もあります。
例えば、洗面所やトイレのリフォームであれば半日~1日程度、キッチンの入れ替えは1週間が目安です。部分的なリフォームの場合、居住しながら行うことも可能です。
新しい付加価値を持たせるリノベーションとは違い、どちらかと言えば「元にもどす」といった工事が多いのがリフォームです。もちろん、デザインや建築資材は好みのものを選べますが、現在の間取りをベースにしているため、短めの工期で完成できることも多いでしょう。
完成がイメージしやすい
リフォームは、現在の住宅を活かしながら修繕を行うことが基本です。そのため「思っていた仕上がりと違った」という失敗に陥りにくい点が特徴です。
一方、リノベーションの場合は自分で好きなように間取りやデザインを決められる点が特徴です。自由度が高いことはメリットでもある半面、失敗してしまうリスクもあります。
例えば、間取りを変えたことでかえって使いにくくなってしまったり、生活導線が思ったようにスムーズにいかなかったりするおそれもあります。リフォームの場合は、居住しながら少しずつ行うこともできるため、完成形や使い勝手が想像しやすいでしょう。
一度に大きな工事をすることに不安がある方は、部分リフォームを何度か繰り返して、少しずつ理想の住まいに変えていくのもおすすめです。
価格を抑えやすい
リノベーションに比べて、リフォームのほうが費用を抑えやすい傾向にあります。ただし、リフォームのなかでもフルリフォームやスケルトンリフォームを選択した場合は、ある程度の費用はかかるでしょう。
リフォーム・リノベーションといった工事の名称そのものではなく、実際に何をどのように施工するのかで工事価格が決まります。簡単なキッチンリフォームの例では、水道蛇口やガスコンロの交換などがあげられます。
このような工事であれば、部品代+設置工賃のみでできるケースがほとんどのため、さほど高額な費用はかからないでしょう。少額の予算であっても、生活を便利にする修繕工事を行うことは可能です。費用を抑えた工事を検討したい方は、リノベーションよりもリフォームがおすすめです。
リフォームのデメリット
次に、リフォームのデメリットを解説します。
・間取りの大幅な変更はできない
・構造自体を変えることは難しい
間取りを大きく変えたい場合は、リノベーションを選択しましょう。
間取りの大幅な変更はできないケースがある
リフォームの種類のなかで、間取り変更を行う「スケルトンリフォーム」を紹介しましたが、この工事ができる家屋は限られます。
具体的には2×4(ツーバイフォー)工法の住宅では、スケルトンリフォームを行えません。またマンションにおいても原則スケルトンリフォームを行うことは難しいため、大規模な間取り変更はできません。
スケルトンリフォームは柱・梁・基礎の3つを残して、家屋を丸裸の状態にします。非常に大がかりな作業になるため、立地環境が悪い場合は工事が難しいこともあるでしょう。
構造自体を変えることは難しい
簡易的なリフォームの場合、建物の構造自体を変えることは難しいケースが多くあります。例えば木造住宅をコンクリート造にするなど、根本的な部分を変えることはできません。
また内部構造としては、配管や水道管の位置変更も難しい工事になります。キッチンの場所を変更したい場合は、これらの工事を併せて行う必要があるため、大規模なリフォームとなるでしょう。
現在の住まいの場所で構造を変えたい場合は、建て直しを選択したほうが良いケースもあるかもしれません。工務店や建築士と相談のうえ、どのように工事を進めるか検討しましょう。
ここまで紹介した、リノベーションとリフォームの違いを表にまとめました。
種類 | メリット | デメリット |
リノベーション | ・自分の好みにデザイン、設計できる
・物件の選択肢が豊富 |
・費用が高額になるケースが多い
・建物の構造によってできる工事と、できない工事がある ・工事の規模が大きく完了までに時間がかかることがある |
リフォーム | ・リノベーションに比べて短期間で工事が終わる
・完成がイメージしやすい ・価格を抑えやすい |
・間取りの大幅な変更はできないケースがある
・構造自体を変えることは難しい |
リノベーションとリフォームの費用相場
ここではリノベーションとレギュレーション、それぞれの費用相場を解説します。工事の具体例も併せて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
リノベーションの費用相場
面積や工事内容によって異なるため平均値は出しにくく、一概に「〇〇円」と定義することは難しいでしょう。リノベーションにかかる費用は「250~2,000万円程度」が多いとされていますが、非常に幅のある数値となっています。
具体的な金額を知りたいときは、工事業者に見積りを出してもらうしかありません。以下ではリノベーションの参考事例を紹介します。
リノベーションの施工事例と価格①
リビングの間取りを大幅に変更し、洗面台をシンプルで使いやすい形にリノベーションした事例です。
住宅の種類 | 戸建て |
築年数 | 30年以上 |
価格 | 600万円 |
工期 | 1か月 |
こちらの住宅では、室内にハンモックを設置したり、おしゃれなステンレスキッチンを導入したりと、個性あふれるリノベーションが行われました。
ビフォーアフター写真は、こちらのページでご覧いただけます。
リノベーション施工事例と価格②
床材の変更や、壁付けキッチンから対面キッチンにリノベーションした事例です。
住宅の種類 | 戸建て |
築年数 | 30年以上 |
価格 | 1,300万円 |
工期 | 2か月 |
こちらの住宅ではインナーガレージを作ったり、猫専用の通路を設けたりするなど、わくわくするようなリノベーションが行われました。
ビフォーアフター写真は、こちらのページでご覧いただけます。
インナーガレージと塗壁がかっこいい 劇的リノベーションハウス
リフォームの費用相場
リノベーションと同様でリフォームの費用相場も工事内容によって異なるため、平均値を聞いてもあまり参考にならないかもしれません。目安としては「200~2,000万円」と言われていますが、リフォーム工事に関しては専門機関による調査データが存在します。
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会の調査結果によると、戸建て・マンションのリフォームにかかる平均額は以下のとおりです。
住宅の種類 | リフォームの平均額 |
戸建て | 471.6万円 |
マンション | 278.6万円 |
参照: 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会/2022年度/住宅リフォームに関する
リフォームの施工事例と価格①
トイレの手すりや洗面所へのエアコン設置で、快適な住まい作りを実現したリフォーム事例です。
住宅の種類 | 戸建て |
築年数 | 30年以上 |
価格 | 570万円 |
工期 | 2か月 |
こちらの住宅では床や壁に断熱材を施工し、家屋の温度を整える工夫をしました。見た目だけではなく、機能面も充実させて長く暮らせる住宅にリフォームしました。
ビフォーアフター写真は、こちらのページでご覧いただけます。
リフォーム施工事例と価格②
基本的な間取りはそのままに、トイレやキッチンなど毎日使う部分をメインにリフォームを行った事例です。
住宅の種類 | 戸建て |
築年数 | 30年以上 |
価格 | 400万円 |
工期 | 1か月 |
キッチンを対面型にしたり、タンクレストイレを導入したりすることで、従来と同じ面積であっても空間が広く見えるようになります。
ビフォーアフター写真は、こちらのページでご覧いただけます。
リノベーションとリフォーム、どっちがいいのか?
ここまで、リノベーションとリフォームの違いを解説してきましたが「結局どっちがいいの?」と疑問に思われている方も多いでしょう。結論として、どちらが良いという優劣はなく、住宅や立地環境などに合うかどうかが判断基準となります。
・部屋の雰囲気を大きく変えたい人はリノベーション
・現在の住宅の雰囲気をそのまま残したい人はリフォーム
上記が判断の目安となるため、参考にしてください。
部屋の雰囲気を大きく変えたい人はリノベーション
リノベーションは、暮らしに大きな変化を与えます。住環境や部屋の雰囲気をガラっと変えたい方は、リノベーションを選択しましょう。
また、デザインにこだわりのある方もリノベーションがおすすめです。リノベーションなら建売住宅ではかなわない、オリジナリティのある間取りや設備を取り入れることも可能です。
現在の住宅の雰囲気をそのまま残したい人はリフォーム
現在の住まいの雰囲気が気に入っていて、間取りにも大きな不満がない方はリフォームを選択しましょう。
デザインよりも機能性を重視する方も、リフォーム工事のほうが最適かもしれません。あまりこだわりすぎないことで、工事費用を抑えて快適な住まい作りを目指せます。
簡単なリフォームであれば住みながら施工することも可能なため、日常生活への影響も少ないでしょう。
リノベーション・リフォームに関するよくある質問
リノベーション・リフォームに関するよくある質問に回答します。
・リノベーションを後悔する人がいる理由は何ですか?
・リノベーションと新築はどっちがいいの?
・リノベーション・リフォームの相談先はどこ?
住まいの改修・修繕を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
リノベーションを後悔する人がいる理由は何ですか?
リノベーションで後悔する理由として「思ったようにならなかった」というケースがあります。シミュレーション上では良い間取りやデザインであったとしても、実際に暮らしたら不便に感じることがあります。
リフォームの場合はすでにあるものを修繕することが多いため、大幅なイメージ違いになる可能性は低いでしょう。リノベーションで失敗しないためには、自分に合うデザイナーや工務店を選ぶことも重要な要素です。
リノベーションと新築はどっちがいいの?
リノベーションと新築住宅は、どちらにもメリットデメリットがあります。新築の場合は耐震性の強さや、ローンの通りやすさなどがメリットです。
一方、取得金額はリノベーション物件よりも高額になるため、自分が出せる予算との兼ね合いになるでしょう。リノベーションの場合であっても「直したい箇所をすべて修繕したら、思いのほか高かった」というケースもあります。
まずは予算の上限を定めて、その範囲内で新築・中古物件リノベーション(リフォーム)などを比較してみると良いでしょう。
リノベーション・リフォームの相談先はどこ?
リノベーションやリフォームの相談先は、地域の工務店で行えます。インターネット上で「地域名+工務店」と検索すれば、多数の店舗や会社が見つかるでしょう。
そのほかに公的な相談機関もあるので、これを利用するのもおすすめです。また、自治体でリフォームの相談会を行っていることもあるので、利用してみるのもひとつの手段です。
リノベーションとリフォームの違いを把握し、快適な住まいを手に入れよう
リノベーションとリフォームは名称が違うものの、基本的な目的は同じです。いずれも、住まいを快適にし、心地良く生活できる環境を作るために行います。
この目標を達成するためには「どのような家で、どのような生活をしたいか」ということを、明確にする必要があります。できるだけ具体的なイメージを持つことで失敗しないリノベーション・リフォームを行えるようになります。
理想の住まいに近づけるよう、さまざま情報を得てリノベーション・リフォームのプランを作成することが重要です。自分だけでリノベーション・リフォームプランを立てるのが難しい場合は、専門家である工務店にぜひ一度相談してみましょう。